一般社団法人 京都府建築士事務所協会 会報誌 「すじかい」No.424 2016.4 に掲載されました。
京都市立伏見工業高校・授業報告のまとめ
桃山支部では教育活動として、京都市立伏見工業高校から2015年度後期の授業を受け、2年生の創造研究Ⅱと1年生のキャリア研究Ⅰを担当しました。
1年生のキャリア研究Ⅰは、2016年2月9日に京北プレカット工場で、木材の加工ラインを見学し、一軒の住宅の棟上げを待つ木材までを体験学習しました。この工場見学は単発の出前授業ですが、本来は住宅の設計に繋げた一連のカリキュラムの中で行いたいものです。
2年生の創造研究Ⅱにおいては、2015年8月から課題作成に取り組み、10月5日の課題説明から冬休みを挟み1日に2限の計11日間の授業を行い、2016年2月15日に最終プレゼンテーションの講評と採点で完了しました。課題は「20年先の私」を作文し、設計者はその文章から設計条件をまとめて「20年先の○○邸新築工事」の設計に取り組みます。最終プレゼンテーションは事前に生徒の投票で選考した10人が壇上に上がりました。作品には、設計のテーマとなる名称を授けるよう指導したところ、音楽・車・読書といった「行動」、木・空・星などの「環境」、ペットも家族ですが特に「家族の・・・」といった「家族」をテーマとしている生徒の多かったことが印象的でした。私の採点は僅差です。その中で目に留まったのが「読書を楽しむ家」や「車と暮らす家」のようにテーマが設計に現れやすい作品でした。何しろ人生経験の少ない高校生ですから、プランニングの行き届かない事は仕方ありません。また指導を担当した牧野氏は、10人の選外から「車と家族をつなぐ家」に高評価を与えています。
今回、最優秀に選定された作品は「家族だんらんの家」。優秀賞は、長い切り妻屋根の美しい「猫が走り周れる家」。いずれも家族をテーマとした気持ちの良さそうな作品です。
伏見工業高校はラグビーの名門です。東京オリンピックで金メダル。オーストラリアからオファーがあり、数十億で契約し、W杯でMVPを獲得。20年後は日本代表の監督として帰国して家を建てる。フェラーリとポルシェが駐車場に並び、週末はイタリアンのアイアンシェフを家に招きホームパーティー。美しい奥さんとフレンチブルドックが玄関にお出迎え。そんな野心みなぎるギラギラした高校生を、私は応援したい。
最後に、私は小学生や中学生の教育イベントを行ったり、専門学校や大学の教壇に立ってきましたが、今回は初めて高校生に関わる機会を得ました。教育をライフワークの一つとする私にとって、このような経験をさせて頂いた京都府建築士事務所協会と桃山支部の皆様に感謝いたします。
2015.03 萬野光雄