伏見工業高校・授業報告(ミニ対談)

2017年5月18日 /

2016年度・京都市立伏見工業高等学校創造研究Ⅱの授業を終えて、
萬野:この度は伏見工業高校の講師、お疲れ様でした。最終プレゼンテーションの10日前の授業では、作品がほとんど出来ていなかったのですよ。牧野さん(講師)も「何とかなるでしょう」と言っていたのですが、採点日には発表できる状態になっていて、ホッと安心しました。実は昨年もこんな感じで、試験前の一夜漬けのような頑張りで、最後の追い込み力が強くって「神ってました」(神懸かっていました)。採点も無事に終えることが出来て、後は表彰式です。
昨年の話になりますが成績の上位はほとんど女子で、我々の協会から表彰した生徒も、全て女子でした。ところが今年の最優秀賞と優秀作品賞は男子でしたから男女での差は毎年同じではなく、年によって傾向があるようです。
プレゼン後の講評時に「社会で必要とされる力は、問題解決力と創造力の2つだ」と言いました。しかしこの工業高校の僕の見立てでは「決断の早い」生徒ほど、良い作品をつくっているのではないでしょうか。限られた時間で物事を進めていく時に、少々間違っていてもエイ・ヤーで実行する「決断力」。何れにしても、すんなりと実現するわけがありませんから、何はともあれスタートを早めに切った生徒が良かったように思います。
小林さんは「優秀作品を発表した生徒と、その作品に追いつけなかった生徒を比較すると、何が決め手になったと思いますか。」

小林:今回、初めてお手伝いをさせていただきありがとうございました。
久しぶりの‘授業’はとても新鮮でした。
今回のテーマは「私の家」という課題で、建築主=設計者の立場で考えられる夢の家でしたね。今の高校生がどんな事を考えているのか、どんな形になっていくのかを想像しながら最初のテーマ発表の授業を聞かせてもらいました。百人百様の考えがあるように、タイトルも様々でしたが、全体的には『くつろぎ』『癒し』『安らぎ』といったワードが多く使われていたように感じました。
萬野さんがおっしゃるように、限られた時間の中で設計を進めていくにはスタートを早く切るにこしたことはないと思います。それに加えて、早い段階から自分の中で設計のイメージがぼんやりとでも考えられていたものが、優秀作品に選ばれたのではないかと思いました。漠然とした抽象的な言葉で表現されるよりも具体的なキーワードを挙げて「こんな事を設計に取り入れたい!」と発表されていた作品は、こちらもイメージをつかみやすく、高評価につながったのではないかと思います。

萬野:次に作品ですが、我々指導した講師3人が偶然にも同じ作品「星見荘」に高い点数を付けました。小林さんの決め手は何でしたか?

小林:テーマと作品が分かりやすくリンクしていて、模型も図面で考えたイメージを一生懸命に形に表現したいという思いが現れている作品でした。またプレゼンテーションも、短い時間のなかで明解に自分の思い描いた家を説明出来ていたのが一番良かったと思いました。

萬野:僕は、コンセプトが魅力的であって、それを実現するための形態が理解し易かったことで、課題を理解したと判断しました。何より、この「星見荘」で寝泊まりする一人の青年の物語が目に浮かび、魅力を感じましたね。
ところで女子生徒はいかがでしたか? 僕は、プレゼンテーションの表現能力は圧倒的に女子が優秀だと思いましたが。

小林:そうですね(笑)私も同感です。初めてのプレゼンテーションという事で、男子生徒さんのなかには気恥ずかしさからか、声が小さくて上手く伝えきれずに発表を終わってしまった作品もありました。それに比べて女子生徒さんは皆はっきりと発表出来ていたと思います。女子生徒さんの方が堂々と発表されていた感じでしたね。

萬野:大学の建築系学科(コース)では圧倒的に女子が増えて優秀な評価を受けていますが、工業高校でもこのような傾向になると思いますか?
小林:難しい質問ですね。どんな傾向になるかは正直分からないですが・・女子の場合、努力する人が多いのかなと思います。もちろん男子も努力しているとは思いますが・・
今回の優秀作品は男子も女子もどちらも選ばれていました。男子・女子の区別なくお互いに切磋琢磨し合い、将来の建築士がこのクラスの中から出て来てもらいたいですね。
小林さん、ありがとうございました。(小林範子×萬野光雄ミニ対談)

 この活動は2年目になりますが牧野孝明さんとは、すっかりスタンダードコンビになりました。またこの度は、女性部の小林範子さんのご協力に感謝いたします。
 以下の作品は、年度を超えてしまいましたが2017年4月21日に新校舎で、表彰式が行われました。
 「伏見工業高等学校」は今年度に閉校しますが、すでに「京都工学院高等学校」が新設されています。表彰式の後、京都工学院高等学校の授業にも関わって頂きたいとの打診がありました。詳細はこれからのようですが、カリキュラムが全く新しくなっています。桃山支部では、内容に沿ったチームを編成して活動を充実させていきたいと思います。
最優秀名誉会長賞 :「いやしの和モダン(自然と家との調和)
                  :温かみのある和と何かと便利でかっこ良い洋の調和」
優秀桃山支部長賞 :「思愛笑成(しあわせ):思いやりと愛と笑いで成る家」
優秀作品賞    :「星見荘(星が見える家):星を意識し外界と繋がりを大切にした住宅」
                                   2017春 萬野光雄

一般社団法人 京都府建築士事務所協会 会報誌 「すじかい」No.437 2017.7 夏号に掲載されました。

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