日曜の連載23

2019年11月10日 /

 万吉の1日の生活は睡魔との戦いである。朝は遅刻する事はなかった。しかし眠い。ドラフターに持たれかかって黙々と鉛筆を滑らせる。夕方6時から食事を兼ねた自由時間。第1に風呂に行く。湯ぶねでゆっくりと寛ぐ時間はない。第2にコインランドリーに行く。洗濯機が廻っている間、第3に食事をとる。第4に洗濯物を取りに行って干す。そして事務所に戻って総時間は1時間である。それ以上時間をかけていると席が無くなるのだ。その後、午前3〜4時まで仕事をする。全員が帰った後、マットレスを床に敷いて枕元に電話を置いて寝た。大学に行く時は掃除をして、寝袋と目覚し時計を持って始発電車に乗り込む。大学で講義時間まで寝る。毎日が眠かった。
 この時期の出来事が建築雑誌に掲載され「築間事務所は不眠不休の不夜城で、車の中で生活しているのか」と上京するとよく言われものだ。万吉が車の中で生活していたのはガソリンがなくなって車が動かなくなったからである。更に、スタッフの名誉のために弁解すると、全員がこの様な車で生活をしていたわけではない。
 この様な日課の中で、万吉は迂闊にも風邪を引いてしまった。拗らせると大変なので1時前に早退した。お昼の13時ではない、深夜の1時前だ。彼の車にガソリンはないので、事務所のバイク(パッソル?)を借りて帰った。途中、エンジンをかけたまま歩道に乗り上げて自動販売機でカンジュースを買っていると警官に声をかけられる。「免許証は」と言われ、免許証を渡すとエンジンを切れと注意され、青色の紙の違反切符を出してきた。「チョットまって下さい」と当然言う。深夜にバイクを歩道に乗り上げてジュースを買っていて違反切符はないだろうと抵抗する。歩道でエンジンをかけたまま放置していたと言うのだ。警官は「住所は間違いないか」と言う。シマッタ。住所は実家のまま変更していない。彼は風邪で頭がもうろとする中で説明した。そんな時、免許証を取り返そうと手を出すと抵抗するなと言わんばかりに、強行にパトカーに乗せられて伏見署に連れていかれ、窓の無い小さな部屋に入れられた。

(本作品はフィクションであり、登場する人物・団体名等はすべて架空のものです。但し、作中で言及している物語の背景の建築や建築家等の人物や団体名は、現実に存在していたり、または過去に存在しておりました。また、原作は2004年4月刊行の「退職届」です。)

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