日曜の連載41

2020年8月16日 /

 万吉、「以前から美術館や図書館を手がけたかった」。
 先生、「世界一の砂時計やぞ」。
 万吉、「しかし砂の博物館と言っていました」。
 先生、「何かようわからんな」と言って、先生は腕を組み「う〜」と唸った。
 その夜、万吉は奥さんから呼び出され、失敗は許されない事と、普通の成功では駄目であり、ぶっちぎりの成功を念押しされた。彼は、誰を、何を、ぶっちぎるのかよくわからなかったが、胸を張って墓参りして頂けるような建築にすることを約束した。
 先生、「ところで平政さんは仕事の依頼に来たのか?」
 万吉、「多分そうだと思います。」
 数日後、今度は町長から「ふるさとの為に一肌脱いでくれませんか」と正式依頼があった。町長の名前は和泉武史、元早日新聞記者である。ワラジを町の新産業とし、鴨の自然飼育や、リサイクル等々のアイデアを実行する。町の老人にワラジを作ってもらい京都の映画村に持ち込み、水戸黄門等の時代劇に採用されたことで有名になった。ワラジを製作した町民はテレビを見て「ありゃ〜私の作ったワラジだけ」と喜んだそうだ。そんな経緯でワラジ町長と親しまれ、島根県内では県知事よりも有名であると誰もが言った。

(本作品はフィクションであり、登場する人物・団体名等はすべて架空のものです。但し、作中で言及している物語の背景の建築や建築家等の人物や団体名は、現実に存在していたり、または過去に存在しておりました。また、原作は2004年4月刊行の「退職届」です。)

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